おばあちゃんの贈り物

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「ハサミ、包丁、研ぎます」と新聞に広告が入った。
捨てようかどうしようか迷っている裁ち鋏がある。錆だらけで切れ味も悪いのだが、なんだか捨てられないでいる。おばあちゃんに貰ったものだからだ。

「このハサミは大切に使いなさい」と新品をくれた。
これだけ錆てたら研師に断られるかも、と思いながら行ってみた。
大型スーパーの駐車場に{研ぎます}と軽トラの前に看板があった。客は誰もいなくて、研師は新聞を読んでいた。
「あのう、これ、こんなに錆ているのですが、頼んでも大丈夫でしょうか」と聞くと、鉢巻き姿の研師は「こんなに錆てるんじゃだめかも。でも取り敢えずやってみるよ。20分後に来て」と言った。
スーパーでゆっくり買い物をして20分後に行ってみると、なんとハサミはピカピカになっていた。
「これはさ、庄三郎作の高いハサミだ。二万円はするよ」と言うので、「さすがおばあちゃん、そんな高いのくれたんだ」と感動すると、「昔の人はいいものを長く使ったからねえ」と研師は言い、「大事にしな」とつけ加えた。
「はい、大事にします」と私は丁寧にお辞儀した。
今日はなんだかいい日だ。ハサミを捨てなかったこと。広告が入ったこと。高価なハサミだったこと。研師のうんちくが面白かったこと。


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