失踪と疾走

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鹿児島の知人が、弟を捜して上京してきた。
4年前に、母親の危篤時にひょっこり現れた時を最後に音信不通になったのだそう。携帯も繋がらない。
「最後の会話は?」
「俺を忘れてくれ。俺はどこかでのたれ死ぬ運命だから」
「お前、ウワサじゃ、中国の女と放浪してるそうじゃないか」
「中国人じゃない!」
「じゃ韓国人か?」
「、、、」
無言のまま立ち去ったから図星なのだろうと兄は言った。アイツは子供のころからフツーじゃなかった、と兄は言うが、そうは見えなかった。兄弟の父親は校長先生だ。弟が大学生の時に1度紹介されただけだが、身長は1、8メートル以上ありナナハンに乗っていた。俳優みたいな顔立ちをしていて、こち亀にでてくる本田くんみたいにナナハンがないとずっと無口だった。1月1日に突然電話をかけてきて「俺、今日の新年会で一曲歌わなくちゃならなくて、歌は苦手なので聞いてもらってもいいですか」と歌い出した。笑い転げるほど音が外れていた。ふざけているわけじゃないので、余計におかしかった。
「ダメですかね」と聞くので、「絶対にウケるよ。私も音痴だけど、みんな笑ってくれるから歌ってよかったって思うよ」
「じゃ、気にしないで歌います!」
元気な声で電話を切った。大学を卒業して公務員になったと聞いていたけど、辞めて失踪してるとは。兄の方はどうしょうもない弟だ、と舌打ちするけれど、失踪も疾走もその人の人生だから。人に迷惑をかけているわけでもない。他の人にはわからない葛藤があったりするものです。
もしも電話が来たら、また超音痴な唄を聞いて笑い合いたい。


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馬里邑れいの本

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