その店で、

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ママひとりで手早くきりもりしている居酒屋がある。今年にママと知り合ったのだけれど、「今までいろいろな女の人を見てきたけど、貴方のような人に会ったのは初めて。新鮮な驚き。透明というか、なんというか、不思議な雰囲気があって、、、」と言われ、貧しく見えたのか気に入ってもらえたのか、ゴルフウェアを何枚ももらった。
その店でこの間、男同士の喧嘩があった。カウンターには6人の客がいた。一人で来ていたどこかの社長が、座席からいちいち他の客の話にいちゃもんつけて威張っていた。「専務」と呼ばれていた客に対しても、「フン、専務がなんだ。おれは社長だ」と言ったり。他の客は右から左に流していた。のだが、一人、とうとう言い放った。「さっきから、言いたい放題、なんだお前。ここはお前ひとりの店じゃないんだ!」店はシーンと静まりかえった。「社長が偉いという代名詞でもあるのか!」と怒りを言葉にしている人の方がマトモに見えた。他の人もママも誰も止めないし、口も出さない。どうなるのだろう、、、と困っていたら、10分後に怒鳴った客は「次は拳がとぶからな」と捨て台詞を吐き、相棒を残して帰って行った。
私が感動したのはこの後だ。喧嘩の最中は一言も喋らなかった残された相棒が、「社長さん、今回、あんたが百パーセント悪い。人の話にあんな嫌みで入ってくることに腹を立てない人はいない。みんな嫌な気分を我慢していた。あいつは代弁者になっただけで。社長さんに反省してもらわないと、みんな楽しく飲めない」そうキッパリ言ったのだ。それでも社長はウンダラカンダラ言って、謝ろうとはしなかった。
この相棒の大人対応はスゴいと思った。喧嘩の最中に同じことを言ったら、社長の立つ瀬がないだろう。片方がいなくなってからのまともな意見で社長に反省してもらおうと思っているのだ。けれど、社長は反省などするタイプには見えなかった。それも念頭においてしっかりと友人の面子を保った言動に感心した。

怒って帰った人は友人に恵まれた人だ。社長はたぶん孤独なワンマンだ。どちらが幸せか、成る程、と思った一幕だった。


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馬里邑れいの本

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